氷の上の「物語」:三宅星南選手がグランプリシリーズ、今季プログラム、全日本選手権について語る

氷の上の「物語」:三宅星南選手がグランプリシリーズ、今季プログラム、全日本選手権について語る

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昨シーズン全日本選手権で6位、五輪では三番目の補欠、四大陸選手権で四位という好成績をあげた三宅星南選手は、10月には2つのグランプリ大会に向けてさらなる飛躍を目指していた。三宅選手はスケート・アメリカとグランプリ・フランスに出場したが、残念ながら今回は思うような結果を出すことはできなかった。シーズン集大成となる埼玉での世界選手権(2023年3月20日-26日)への出場権を獲得するため、トップスケーターと対戦する全日本選手権を前に、三宅選手は今の思いを語ってくれた。

2002年に岡山県で生まれた三宅選手は、2006年からスケートを始め、2020-21シーズンの全日本ジュニア選手権で3位に入るなど、年々順位を上げてきた。2020年のNHK杯で9位に入賞したのがグランプリデビューだが、この大会は新型コロナウイルスのため日本の選手のみが出場した大会であった。

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昨年の全日本選手権で表彰台に上がったのは今年2月に行われた五輪に出場したスケーターたち(羽生結弦、宇野昌磨と鍵山優馬各選手)だった。日本連盟はその次の三名を四大陸選手権に派遣することを決定し、6位入賞の三宅選手は、今シーズン好調な三浦佳生、友野一希各選手とともに四大陸選手権に出場することができた。

2022年四大陸選手権では、三宅選手はショート、フリー、合計得点で自己ベストを更新する力強い滑りを見せ、総合4位。銀メダルと銅メダルは日本のチームメイトが獲得し、金メダルは韓国のチャ・ジュンファン選手が獲得した。「四大陸選手権で4位になれたことはとても自信につながりました」と三宅選手は語ってくれた。「また、四大陸選手権に出場出来たことでやっとスタートラインに立てたような気がしました。」

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© Sena Miyake | Instagram

7月には、6つのグランプリ大会のうち、最初の大会であるスケート・アメリカに出場することが決まった。さらに、五輪で銀メダリストの鍵山優馬選手が怪我のためフランス大会を欠場したことに伴い、アンジェへの出場も決まった。2022-23シーズンは新しいオリンピックサイクルの始まりなので、多くのスケーターは次の五輪を見据えて目標やゴールを 設定している。それは三宅選手も同様で、グランプリ大会の前に「今シーズンは4年後に向けての土台作りのシーズンにしたいと思っています。そのためグランプリシリーズに2戦出場させていただけるのは自分自身にとってとてもいい経験になると思うので、成長できる試合にしていきたいです」と語ってくれた。

スケートアメリカ2022では、17歳のイリア・マリニンがフリーで四回転アクセルを成功させ、観客の喝采の中、シニアグランプリのデビュー戦を金メダルで飾った。チャ・ジュンファン、三浦佳生、ダニエル・グラスルら強豪選手とも対戦した三宅選手は、思うような演技ができなかった。ショートプログラムでは、トリプルアクセルで転倒してしまい、合計点から2点減点された。6位で迎えたフリーでは、転倒やジャンプパスの減点などのミスがあり、総合9位まで順位を落とした。

2週間後のフランス大会のショートプログラムでは、トリプルアクセルをシングルで跳んでしまったため無効となり、10位にとどまった。最終的には体調不良のためフリーを棄権することになり、「グランプリシリーズ2戦とも自分自身にとってはとても残念な結果にはなりました」と三宅選手。それでも、「とても成長できる機会を与えてもらえたと思っています。」そして、これらの大会を今後のバネにすることも考えているようだ:「この経験を活かして全日本ではベストを尽くしたいと思います。」

アメリカ、フランスともにショートプログラムで滑った『Unchained Melody』は、1990年の映画『ゴースト』で有名になった曲で、三宅選手が昨年から滑っているプログラムだ。「今シーズンは今年の2月に作っていただいたプログラム『愛の夢』を滑ろうと思っていたのですが、新ルールに変更になったこともあり、手直しをして頂いたプログラムがなかなかしっくりきていませんでした。そこで試しに昨年使用していたプログラム『Unchained Melody』を滑ってみたところもう一度使いたいと思い、昨年のプログラムに戻すことになりました。」 『Unchained Melody』は、柔らかく始まり、情熱的なフィニッシュへと盛り上がっていく曲。三宅選手の音楽的、感情的なスケーターとしての長所がすべて発揮できる曲だ。

彼の強味は今期のフリープログラムの『タイタニック』でも生かされており、昨シーズンの『白鳥の湖』と同じようなスタイルになっている。タイタニック号が出航するところから始まるフリーは、ステップとコレオシークエンスのディテールや表現に注意を払いながら、観客を物語に引き込んでいく。『タイタニック』、『白鳥の湖』ともに、バレエや映画の大作を4分間という短い時間で表現し、物語を語る試みだ。「昨年の『白鳥の湖』も今シーズンの『タイタニック』も、音楽を聴きながら自分なりに物語の流れであったり、どういう場面なのか想像して表現に落とし込んでいます。」昨年の『白鳥の湖』の衣装は、バレエで見られるような王子様のシャツに、片方の肩と腕に沿った黒い羽を組み合わせたもので、印象的だった。「衣装に関してはその曲や作品に登場する人物をイメージして作って頂いています。タイタニックでは主人公のジャックをイメージして作って頂きました。」このように、三宅選手の衣装は演じる人物、そしてこの人物を通しての物語や世界観を表現する大きな役割を果たしており、ジャンプなどの技術的な要素を超えて、観客や審査員に感動を与えている。

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© Sena Miyake | Instagram

これまでの経験を踏まえ、この先を見据え、三宅選手が大切にしているのは「成長」。4回転トウループとサルコウを使いこなし、繊細な演技からパワフルな演技まで、多彩な能力を持つスケーターであるだけに、今後の大会やシーズンにおいてTESやPCSがどのように成長していくのが楽しみだ。今シーズン、観客やファンに注目してもらいたいところはあるかとの問には、「今シーズンはプログラム全体のスケーティングのスケールの大きさを観て頂きたいです。昨年に比べ自分自身身体的にとても成長出来ていると感じていて、スケーティングスキルも成長していると感じています」と答えてくれた。

全日本選手権は毎年激戦で知られている上、今シーズンのグランプリファイナルに出場した6人のうち4人が日本人であり、スリリングな大会となることは間違いない。その他の種目でも、女子では坂本花織、三原舞依、渡辺 倫果、住吉 りをん、河辺 愛菜、そしてアイスダンスでは村元哉中/高橋大輔、小松原美里/小松原 尊など、今季のグランプリ大会でお馴染みのスケーターたちが顔を揃える。三宅選手が好きで憧れているスケーターはたくさんいるが、「その中で1番憧れていて目標にしているスケーターは髙橋大輔選手です」と、かつて男子シングルに出場していた高橋選手の名を上げた。

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© Sena Miyake | Instagram

来年3月に開催される世界選手権は、日本人選手にとって地元の観客の前で演技ができる特別な機会であり、その出場権を争いとなる全日本選手権も例年以上に白熱するだろう。前回世界選手権が埼玉で開催されたのは2019年:そのときは、羽生結弦がアメリカのネイサン・チェンに次いで2位、宇野昌磨が4位、田中刑事は14位となった。選手たちはよく自国の観客のエネルギーや雰囲気について語るが、三宅選手にとっても「日本で開催される世界選手権に出場するのは幼い頃からの目標です。全日本では今シーズン経験したことを更に活かしてベストを尽くせるようにしたいです。」

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© Sena Miyake | Instagram

今シーズンはおそらく今までのどのシーズンよりも、フィギュアスケートがスポーツなのか、それとも芸術なのかという根本的な問いが前面に押し出されているのではないだろうか。むろんその両方であることには間違いないが、この2つがどのように作用し合い、補完し合っていかということを考えると、定義することの難しさの中にこそフィギュアスケートの美しさがあるように思われる。私たちは、スケーターがアスリートとアーティストの両方の役割を担う姿、技術と芸術の融合を何度も目にしてきた。

フィギュアスケートとは何か、たとえば5歳の自分に一言で説明するとしたら、という問に対して三宅選手はシンプルに答えてくれた:「「あなた物語」ですかね笑」。

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